天然サクラマスでなければ鱒乃寿しの味は出せない

江戸時代に富山を流れる神通川でサクラマスが大量にとれたことから始まった鱒乃寿しの歴史。
川魚のあっさりとした風味を深い旨味の塊に熟成させる鱒乃寿しの秘伝の製法は、
脂の多い他の魚には不適です。

サクラマスは仄かな香りを持つ魚です。
また中型魚でありながらも、部位毎の味に明確な違いがあり
香りとともに熟成され、クルミのような濃厚な寿しの味になるのです。
脂の多すぎる輸入の大型魚、あるいは餌の匂いが染みついてしまっている養殖魚では
繊細な鱒乃寿しの味わいは決して出すことができません。

かつて十返舎一九が「うますぎてあちこちにほっぺが落ちている」と記した鱒乃寿し
当店では天然のサクラマスにこだわりを持ち続けております。

 

年間6000本のサクラマスと向き合って

「本鱒」とも呼ばれ、神にささげる高級魚として知られるサクラマス
脂の味や調味料に頼らない、本物の旨味を30年以上に渡りサクラマスとともに追及してきました。

私がお客様とともに作り上げてきた伝統の総決算として
「北海道は寿都産のサクラマスを使用した鱒乃寿し」をお届けさせていただきます。
寿都のサクラマスは尻別川を母川とする個体です。
「北海道尻別川産のサクラマスは他川産のサクラマスに比べて2割程度大きい」という特徴があります。
サクラマスには其々の起源河川によって異なる成長様式を遺伝的に備えているとされています。
北海道の河川別にみると尻別川産のものは抜きんでて大きく、
「板マス」と呼ばれる体高の高いものも多く見られます。

サクラマスは母川回帰性が強く、生まれた支流まで回帰することが知られています。
間違えて迷い込む個体はほぼ見られず、遺伝的特性を合わせて考えると
尻別川を母川とするサクラマスはそれだけで一つの「ブランド」と言っても過言ではないでしょう。
画像をご覧いただけるとお分かりいただけると思いますが、
寿都産のサクラマスはマンゴープリンのように滑らかでキメの細やかな身です。
弾力がありながらもしっとりとした食感、芳香、噛みしめるほどにあふれる旨味は
国産天然サクラマスの中でも随一のものです。

 

富山県産最高級コシヒカリ

私が惚れ込んだ米、
それが当店で使用しているコシヒカリです
噛むと弾力を感じ、
モチモチ感と甘味、旨味が
絶妙のバランスなのです


鱒乃寿しは「熟成」が肝になってきます
締めた後の「押し」によって旨味を熟成させるのですが
弾力がある一定レベルでなければべちゃっとしてしまい
甘味、旨味が適度でなければ
熟成の味のバランスがどちらかに寄ったものになってしまいます

当店の契約農家さんのコシヒカリは
正に鱒乃寿しの為の米です
魚の旨味を吸い上げ、そのプリプリ、モチモチした米粒の中に取り込み、
米の甘味、旨味で熟成させつつ、弾力はそのまま
とても素直な米で鱒のすしの為のコシヒカリといえます

その日の天気や感じる湿度によって米の炊き加減を少しずつ変えております
その炊き方にも素直に反応し、相棒であるサクラマスを待っていてくれる
最高のコシヒカリと感じています

 

サクラマス研究の若き権威、大串様より

元北海道大学大学院日本学術振興会特別研究員で現在は寿都町役場産業振興課水産係でご活躍されており
農学博士である大串伸吾様よりお言葉を頂きました。


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「消費される場面を思い描きながら対応してほしい」。
2013年の夏,宏之さんに言われたこの一言は,漁業生産の場に向けられた「生産のあり方」を物語る本質的なメッセージだったと,私は思っています。
年間に6000尾ものサクラマスを捌く職人は世界中を探しても,宏之さんしかいないでしょう。
その豊富な経験からこそ,ご主人が追い求める「ますのすし」に必要な素材が,天然サクラマスであり,厳選された品質が求められるのです。
その貴重な素材を一匹一匹丁寧に切り出し,不要となる部分を極力出さないよう,個体ごとに工夫された包丁さばき。
塩と酢がマスの身に浸透した頃合いを見極める繊細な指づかい。
惜しげもなくその工程を見せてくれたその姿勢には,決して見て真似できるようなものではない,「匠」としての熟練度の高さを感じさせるものでした。
 今では海外で養殖されたサケマス類を使用する動きがますのすし業界に浸透して久しい時代となりました。
しかし,富山の数多くの職人たちは「サクラマスを使ったますのすしを作りたい」という気持ちを胸の奥に秘めています。
しかし,希少で入手が困難かつ高価で商売としては薄利となってしまう素材を使用してでも,それを実現できる「匠」は,ほんの一握りなのです。
その「匠」の逸品を今年も賞味できる喜びを,多くの方と共有したいと思います。
元 北海道大学大学院日本学術振興会特別研究員
現 寿都町役場産業振興課水産係 技師 博士(農学)
                           大串 伸吾
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当店は明治の関野庄右衛門の代から140年、鱒乃寿しの祖である吉村新八の配下関野某から数えて300年の伝統がございます。
伝統とは漫然と時を重ねることにはあらず、
目の前のサクラマスと旨い米と向かい合い、お客様とともに創り上げていくものだと日々実感しております。
今日も皆様の「美味しい」の笑顔を想い
鱒乃寿し作りに精進いたしております。

                                    庄右衛門元祖関野屋店主 関野宏之