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サクラマスは一般的に降海型のヤマメとして知られていますが、厳密には陸封型のサクラマスも存在します。
陸封型のサクラマスは銀化する場合もありますが、基本的にサクラマスと呼ばれるものは降海型のものであり、陸封型はヤマメと呼ばれております。
旬は三月頃~五月頃、サクラの咲く時期に母川に戻ってくるのでサクラマスと呼ばれるという説もあるようです。
産卵期である秋まで母川で暮らし、秋まで一切餌を口にせず、その為に海で栄養をたっぷりと蓄えて戻ってくると言われています。
※近年の調査により川でもプランクトンや小型の魚等を食べている事が判明
鮭・鱒科特有の生臭みは少なく、筋肉質な部分には清々しい香りが感じられます。
身は非常に柔らかく、旨味が強いのが特徴です。
かつては神前に奉納されたといわれるサクラマス。
その味は古人を魅了し、神に捧げるべき魚として本鱒と呼ばれることになりました。
サクラマスの漁獲高を誇った神通川ですが、昭和中期からは激減し富山産のサクラマスは流通から消えることとなってしまいました。
2010年以降、富山ではサクラマスの養殖に取り組み、現在では一定量の供給が出来るようになってきています。
これは富山に住むものとして、鱒寿し作りに携わる者として非常に喜ばしい事であります。
かつての越中富山のサクラマス文化が再興することを強く望みます。
しかしながら、養殖のサクラマスは「伝統の鱒乃寿し」には適当なものではない、と元祖関野屋は考えております。
決して富山の養殖サクラマスを否定するものではない事をまず述べさせていただきたいと思います。
サクラマスという魚は先に述べたように柔らかい肉質とその風味が特徴であり、非常に美味しい魚の一つです。
希少な幻の魚、という立ち位置ではなく、多くの方にその美味しさを堪能していただきたいと常々感じております。
まず、端的に言うならば養殖と天然物の決定的な違いは「脂の量と風味」です。
天然物に比べて養殖魚は栄養管理が非常に適切であるがために、天然物ではありえない脂が乗った魚となる傾向にあります。
均一な給餌による、身の薫りの変化も見過ごすことは出来ません。
「したたるほど脂の乗った」=「美味しい」という昨今の風潮に異を唱えたいところではありますが、それはさておき。
鱒乃寿しの醍醐味とは「ネタの旨味とシャリの旨味の熟成の味」にあると元祖関野屋は考えております。
脂が多すぎるとシャリがべたついたものになり、鱒乃寿し本来の風味を損ねるだけではなく、「米の中での熟成」を阻む要因となってしまう事は長年の経験で実感しております。
米が脂でコーティングされてしまうと米の中に魚の旨味成分が浸透しなくなる、つまりは「脂の多い魚では熟成の味が出せない」ということです。
数年前にお客様から当店の鱒乃寿しを「くるみ味」だとご評価いただきました。
調べてみると、くるみ味とは「コクのある旨味、最高級の美味への賛辞」とのこと。
元祖関野屋はこれからも皆様に愉しんでいただける鱒乃寿し作りに精進していきます。
柔らかく、サクラマス特有の爽やかな香りが特徴です
鱒乃寿しのうまさのベースとなる部位です
筋目の幅は普通~幅広、形は直線から「く」を描いているものが多くなります
※個体の大きさ、切り方によって変わります
いわゆる「トロ」の部位です
甘く蕩ける脂の旨味は天然物だからこそ出せる極上のもの
市場に出回っているサケ・マス類の脂には危険性が指摘されていますが、
国産天然サクラマスにはそのような心配は一切ありません
クルミのようなコクのある脂の美味をお楽しみください
筋目は幅広で直線、色は淡いピンク~黄白色です
しこしことした食感、噛めば噛むほど味が出る赤身の部分です
最も動かす部位だけに繊維の太さが際立ち、
魚の旨味が凝縮されています
筋目は幅が狭く、「く」の形をしています
お酒のお供としても鱒乃寿しは絶品です。
後述の「煮切り醤油」と合わせれば至福のひとときを味わえる事間違いなしです。
そんな時にお勧めしたいのが、部位毎の味わい方。
それぞれの部位は先に述べさせていただいたように「筋目」と「色」で大まかに判別できます。
サクラマスは他のサーモンやトラウトのような大型魚ではないため、鱒乃寿しを造る際にすべての部位が混在する形となります。
背の柔らかさと芳香、腹の濃厚な脂、尾のジューシーな旨味。
分けて味わうのもまた一興です。
鱒乃寿しは発酵食品です。
伝統の熟成の味をまずは何も付けずにそのまま味わって頂きたいと考えております。
一切れ二切れをそのままお楽しみ頂いた後に、お好みの味付けで。
さて、お寿司といえば「醤油」は切っても切れない間柄ですが、元祖関野屋の鱒乃寿しをお楽しみ頂く皆様に、お勧めの醤油のアレンジ方法がございます。
普通の醤油ですと僅かながら「えぐみ」が残りますが、煮切り醤油はこのえぐみは全く無く、鱒乃寿しの旨味を最大限に引き立ててくれます。
◆材料
・濃口醤油
・みりん
・日本酒
※濃口醤油:みりん:日本酒が 2:1:1の分量
(例:濃口醤油20cc、みりん10cc、日本酒10cc)
◆作り方
①みりんと日本酒を1:1で混ぜ合わせ、鍋に入れて火にかけます
②軽く煮立ててアルコールを飛ばします
③濃口醤油を①で作ったものと同量入れて火を止めます
サクラマスの香り、コシヒカリの甘味、熟成の旨味がこの醤油で広く奥行のあるものに変わります。
是非お試しください。